その005で親指を使った奏法「いかりや奏法」の事を、動画で説明しているのですが、

実は、説明が足りない部分があります。

※005では、いかりや奏法とは、右手の側面でブリッジの近くを押さえて親指で弾く事と説明してます。

https://takao-bass.pro/20190825/

いかりや奏法について考察するには、エレキベースの歴史から追っていきます。

1960年代にフェンダー社が、世に出したエレクトリックベースギター「ジャズベース」は、ブリッジ近くにミュートが付いてました。

60年代のジャズベースのミュート
60年代のジャズべのミュート

50年代に出した「オリジナルプレシジョンベース」も、60年代に出した「プレシジョンベース」もブリッジカバーにミュートが付いておりました。

60年代のプレべのミュート
60年代
50年代のオリジナルプレべのミュート
50年代

これは、設計をしたレオ・フェンダー氏が

「ウッドベースと違って、音が伸びすぎる。(サスティーンが長すぎる)」

と言っていたためです。

しかし、ほとんどのベーシストが、ミュートを外して使っていたようで、

ウッドベースと違った新しい楽器の新しい音に、新しい可能性を感じていたのでしょう。

数十年たった今、様々なエレキベースがフェンダー社を基本としているぐらい、当時から完成されていた楽器なのに、唯一まったく定着しなかった部品と言えます。

(使っている有名人はジェイムス・ジェマーソンぐらいでしょうか)

James Jamerson
James Jamerson

また、フェンダー氏は、親指で弾く事を想定しておりました。60年代のベースには、1弦側にフィンガーレストがあります。そこに指を置いて弾くと考えてました。

60年代のフェンダー社の広告
60年代に出したフェンダー社の広告より

実際は、ほとんどの人が親指をピックアップに乗せて、人差し指と中指で弾くようになり、親指で弾く人は少数派になりました。

いかりや長介氏が、どういう意図で親指で弾いていたのかはわかりませんが、

・ハワイアンバンド出身でウッドベースのような音が好き。

・海外ベーシストの少数派の演奏に影響された。

・当時のフェンダーの取扱説明書に、忠実に従った。

など色々と考えられます。

そして、ブリッジの近くでミュートしながら弾くというのは、どうやらあやふやに広まった知識のようで、

いかりや長介氏は、ブリッジカバーとピックアップフェンスは外して使用していますが、

フィンガーレストはそのままで使っております。

いかりや長介氏の構え

当時のインターネットがない時代に、噂で広まってしまったのでしょうか・・・

私はどこかで、ミュートした音をいかりや奏法と聞いた記憶があるので、もはや正解はわからないんだと思います。

よって、

私は、ブリッジの近くを押さえて親指で弾く事を、いかりや奏法と定義しております。

誕生して70年ぐらいの、エレキベースという新しい楽器の可能性は、まだまだ大きいのだと思います。

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